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カルテ⑦ たった一度しかないコンサート モダンタイムズ 10月号 蔵の街クリニック原稿

栃木、佐野、小山、足利、宇都宮、真岡、日光、壬生、桐生、玉村、新田、太田、笠懸、館林、浦和、大宮、深谷、越谷、水戸、柏、青梅、武蔵野、国分寺、三鷹、東京、軽井沢、富山。

これまでに栃木[蔵の街]音楽祭のチラシを配布した都市名だ。
総数73,000枚。ほとんど皆、いわゆるボランティア活動である。
東京に下宿する大学生O委員が出向いた浦和。S&Y委員が遠征した高崎。
K委員の力が光った日光・軽井沢。
昨年の出演者M氏とそのお仲間が挟み込んで下さった青梅。
今年出演の皆さんが御協力下さった深谷、柏、東京の複数のコンサート。
東京では、バザール出店者の御協力もいただいた。
真岡や三鷹、武蔵野などは相手館の御好意だ。
心強いのは、東毛・両毛地区の諸都市にお一人で1,000部以上をお配り下さった音楽祭メインステージ出演者、館林の大西維津子さんの「思い」である。
勿論、家族も含めた実行委員各位の多大な協力はいうまでもない。
チケットの発売所も、従来の栃木市内と「ぴあ」「セゾン」のみから、今年は、上野楽器(宇都宮)、ヤマハ、進駸堂(小山)、カザルスホールチケットセンター(東京)
そして、JR栃木駅まで拡大した。
一人でも多くの方に聴いて欲しい、栃木に来て欲しい。
今年の演目は、音楽の専門家、久保田慶一東京学芸大学助教授に「刺激的」「絶対に聴きのがせない」と評された好企画ばかりだ。
「四季」とは一味違うヴィヴァルディの協奏曲集。
王宮の音楽会のように、少人数で珍しい楽器を聴く贅沢なコンサート。
有名な交響曲「運命」「田園」が百九十年前に初めて演奏された時の模様を再現しようとアーティストの意欲と栃木の気力が実現させたCD3枚分のコンサート。
ヴァイオリン音楽の歴史とお国柄を音で辿る桐山氏、人の声の魅力の可能性に挑む野中氏、古今東西の笛を一堂に集めた吉沢氏、各氏のコンサートも見逃せない。
メインステージ(入場無料)で、友だちの晴れ姿、若い音楽家、アマチュア音楽家の熱演に拍手を贈るのもよい。
どのコンサートも、栃木ならではの、ユニークな、面白い演奏会ばかりである。
群馬県玉村町にしきのホールの方々は「わが町では到底実現し得ない羨ましいばかりの音楽祭。
泊まり掛けで参加したい」とおっしゃるし、サミットで発表する富山市の方は「夜行で帰るから全部聴きたい」と意欲を見せる。
市当局を始め、広告・協賛を頂戴した各社、各店篤志家の皆様のおかげでチケットも割安(共通回数券、セット券、学生共通券を活用すればさらにお得。最大33%引)だし、入場無料のコンサートさえある。
昨年の[蔵の街]音楽祭には、関東一円は勿論、宮城、福島、山形、新潟、富山、岐阜、大阪、福岡の各都府県からおいでいただいた(アンケートによる)。
皆様はもうチケットをお持ちだろうか。
音楽祭サミットのための「全国楽勢調査」で、全国の様々な音楽祭の開催者がもっとも多く協力して欲しいと思っているのは「地域住民」だった。
中村靖氏(音楽学者・評論家)は、古楽情報誌アントレで
「栃木市民にこの音楽祭の意義をもっと理解し、バックアップしてもらうには・・・地元の経済の反映に直接つながるアピールの仕方(人が来れば金を落としていくという発想の浸透など)も場合によっては有効だろう」と提言する。
母校富山医科薬科大学混声合唱団を迎えた石川県穴水町の渡海弘教育長は
「町勢発展の施策の一つとして交流人口の増大を図っている」から他都市住民による同町でのイヴェント開催を歓迎するとおっしゃる(同団公演プログラムより)。
遠くの友だちに「今度栃木でこんな音楽会があるよ」と、話題にするのはいかがだろうか。
再会のきっかけになるかも知れない。
クラシック音楽は初めてでも、皆が一生懸命に演奏する姿を見れば、きっと清々しい思いになるだろう。
音楽はごまかせない。いい加減なこと、理不尽なことが罷り通る現代、これは貴重なことだ。滝口入道が小督の笛に哀れを知ったように、音には不思議な力がある。
国を越え、時代を越え、世代を越えて人の魂を揺さぶる力だ。
たった一度しかないコンサートを本当に活かさなかったら、栃木に暮らしている甲斐がないじゃないか。
山本有三先生ならきっと、こうおっしゃるに違いない。